日本進出の台湾TSMC、半導体市場における支配力拡大、韓国内からは懸念の声高まる

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2024年2月26日、韓国のメディアSBS Bizが報じたニュースは、半導体業界における地殻変動の予兆を伝えるものだった。台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)が、その技術力と市場支配力を背景に、日本国内における初の工場開設のリボンを切った瞬間は、単に新しい施設の始動以上の意味を持っていた。この出来事は、グローバルな半導体産業のパワーバランスに重大な影響を及ぼす可能性がある。特に、韓国のサムスン電子や中国の華虹グループとの競争において、TSMCのシェア差がさらに拡大することが予測されている。本記事では、TSMCの日本進出がもたらす影響と、それに伴う韓国内の反応を詳細に解析する。

TSMCの市場支配力の拡大

トレンドフォースの最新の市場調査によると、TSMCの2024年の売上高シェアは前年の59%から62%へと増加する見込みで、台湾メーカー全体でのシェアは67%から70%に跳ね上がると予測されている。この数字は、ファウンドリ市場全体が昨年の1174億ドルから1316億ドルへと12%増加する中でのことであり、TSMCの成長率は市場全体の成長を上回っている。TSMCの独走は、サムスン電子や華虹グループのような競合他社のシェアが減少する中でさらに際立っている。

 

日本進出の戦略的意義

TSMCにとって、日本での第1工場の開所は、同社のグローバル戦略において重要な一歩である。熊本県に設けられたこの工場は、高度な技術力を背景に、日本の半導体産業の再興を象徴するものであるとされている。TSMC創業者のモリス・チャン氏は、この工場が「日本の半導体生産のルネッサンスを牽引する」との強い信念を示している。また、市場調査機関トレンドフォースは、この開所式を「日本の半導体産業における次の10年の地図を描く出来事」と評し、「未来志向の大胆なステップ」として高く評価している。

韓国内の懸念と批判

一方、TSMCのシェア増加と日本進出に対する韓国内の反応は、懸念と不安の声が多い。特に、韓国のネットユーザーからは、TSMCがさらに市場を支配し、「事実上の独裁体制」になる可能性を指摘する声が上がっている。サムスンに対しては、「創意的な革新の不足」や「多角化しすぎたビジネスモデル」が競争力の低下を招いているとの批評が見られる。さらに、政治的な側面からは、尹錫悦大統領の外交政策に疑問を呈し、「外交力の欠如」と批判する声もある。

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総括と展望

TSMCの市場支配力の拡大と日本進出は、半導体業界における新たな局面を示している。この動きは、サムスン電子をはじめとする競合他社にとって重大な挑戦であり、革新的な技術開発市場戦略の見直しが急務であることを示唆している。また、韓国政府にとっても、この新たな市場環境に対応するための外交戦略と産業支援策の再検討が求められている。TSMCの戦略的な動きは、半導体産業における新しい時代の幕開けを告げており、今後の展開が注目される。

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