早期・希望退職を募集する大手企業が続出、既に2023年の通年を上回る「3年ぶりに1万人超の可能性」黒字のうちに構造改革か

ビジネス・仕事

今年に入り、早期・希望退職を募集する大手企業が続出している。この傾向は、上場企業による募集人数がすでに2023年の通年を上回り、さらに増加の兆しを見せている。従来、早期退職や希望退職は経営が厳しい時期に実施されることが一般的だったが、今回は経営環境が比較的良好な状況でも、構造改革を目的とした人員削減が進んでいる。

主要企業の動向

カシオ計算機は、中国経済の低迷により時計の販売が伸び悩み、2024年3月期の連結決算の最終利益が前期比8.9%減の119億円と発表。これに対し、全従業員の5%にあたる500人の削減計画を発表し、「事業規模と固定費のバランスを適正化し、経営基盤を強化したい」と語った。

 

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コニカミノルタも、ペーパーレス化の影響で複合機などの販売が振るわず、来年3月末までに国内外で全体の6%にあたる2400人規模の削減を実施予定。2024年3月期には最終利益が5期ぶりに黒字転換したが、「1人当たりの生産性の高い組織に変革したい」との方針を示している。これにより、組織の効率化と市場競争力の向上を目指している。

ワコールホールディングスは、2024年3月期まで2期連続で最終赤字を計上し、今年も150人程度の募集に対して215人の応募があった。これにより、2年連続で早期退職を実施している。ワコールは、国内外での需要変動に対応するため、今後も経営資源の見直しを進める方針だ。

資生堂は2024年12月期に増収増益を見込みながらも、日本事業の収益改善を目指して早期退職を実施。資生堂の幹部は「日本市場の競争環境が厳しい中で、柔軟な経営体制を構築することが急務」と述べ、戦略的な人員配置を進めている。

ソニーグループは2024年3月期に9705億円の最終利益を計上しながらも、競争が激しいゲーム事業の子会社で約900人の削減を計画。ソニーは「成長が見込めない分野でのリソースの見直しを行い、収益性の高い事業に注力する」と説明している。

 

黒字でも人員削減の実態

東京商工リサーチのデータによると、今年の上場企業による早期・希望退職の募集は16日時点で国内で27社、計4474人に達している。これは前年同期の3倍超であり、2023年の3161人を上回る。このペースが続けば、3年ぶりに1万人を超える可能性がある。

特筆すべきは、27社のうち17社が直近の通期決算で黒字を計上している点だ。資生堂ソニーグループの例が示すように、黒字でも将来的な競争力を強化するために人員削減を行う企業が増えている。

さらに、非上場企業もこの動きに追随している。東芝は16日に国内の50歳以上の従業員を対象に最大4000人の早期退職を募ると発表。東芝の担当者は「市場環境の変化に迅速に対応するために、柔軟な組織体制を構築する必要がある」と述べている。

 

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人員削減の背景と課題

業績が比較的好調な企業が人員削減に踏み切る背景には、固定費を削減して市場の変化に迅速に対応し、中長期的な競争力を強化する狙いがある。また、雇用市場の流動化が進んでいることも影響しており、東京商工リサーチの本間浩介氏は「事業転換のため、成長する事業以外での人員削減が目立つ。必要な人材を都度補充すればいいと考えている」と指摘している。

しかし、安易な人員削減には優れた人材の流出というリスクも伴う。「早期退職の実施は、経営陣に自信がないからだ。優秀な人材は早く去る傾向がある」(経済同友会の新浪剛史代表幹事)との声も上がっている。このため、企業は人員削減に際して、慎重な計画と実施が求められている。

また、企業のリーダーシップと社員とのコミュニケーションが重要となる。経営層が透明性を持って方針を示し、社員の理解と協力を得ることが、円滑な人員削減の実施に繋がる。社員の士気を保つためにも、適切な支援策を講じることが重要だ。

 

業績向上と今後の展望

2024年3月期の決算がほぼ出そろい、東京証券取引所に上場する企業の最終利益の合計は前期比13.0%増の40兆9509億円で、3年連続で過去最高を更新した。円安や値上げ、コロナ禍からの経済正常化が業績を押し上げた。

特に、製造業の最終利益が21.7%増の約23兆円となり、全体を押し上げた。輸送用機器分野では、海外での収益が円安で膨らみ、約8割増の8.7兆円となった。自動車大手7社すべてが売上高の過去最高を更新し、4社は最終利益も最高を記録している。これにより、日本の製造業全体が活気づいている。

一方、非製造業の最終利益は3.1%増の約17兆円だったが、値上げで黒字に転換した電気・ガス業を除くと減益だった。コロナ禍で運賃や資源価格が高騰した海運や商社は、反動で業績が落ちた。これらの業界は、今後の市場動向を見極めながら、戦略の見直しが必要となるだろう。

2025年3月期の全体の最終利益は4.9%減と、減少に転じると見込まれている。SMBC日興の伊藤桂一氏は「円相場の動きに加え、国内では賃金の上昇に伴う消費の動向、海外では米国経済の先行きが企業業績に影響する」と指摘している。これにより、日本企業は国内外の経済環境を注視しながら、柔軟な対応を求められることになる。

 

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まとめ

早期・希望退職を募集する大手企業の動向は、経営環境が良い時期にもかかわらず、構造改革を目指す企業が増加していることを示している。この背景には、固定費削減と市場の変化に対応するための戦略があり、雇用市場の流動化も一因となっている。一方で、優れた人材の流出リスクや経営陣への不信感も指摘されており、企業の人員削減には慎重な対応が求められている。

企業は、短期的な利益向上だけでなく、長期的な成長と持続可能な経営を目指す必要がある。そのためには、バランスの取れた戦略と効果的なコミュニケーションが不可欠だ。社員の士気を保ちながら、柔軟で強固な経営基盤を構築することが、これからの企業の課題となるだろう。

 

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