要約記事:https://financial-field.com/oldage/entry-439352
要約
- テーマと課題意識
定年後に再雇用されるケースで、「仕事内容はほぼ同じなのに給与が下がる」ことがよくある。これは法律上問題ないのかを検証している。 - 実態データ
リクルート ジョブズリサーチセンターの調査(2023年、60~74歳のシニア層)によれば、再雇用後の給与は定年前の「50~75%未満」が最も多く、全体の43.3%。一方、定年前と同じかそれ以上の給与(100%以上)という回答は14.1%にとどまる。つまり、多くの場合、給与が下がる。 - 法律制度と原則
- 「同一労働同一賃金」の考え方があり、正社員・非正規社員、または嘱託などの形態に関わらず、仕事内容・責任・配置などを考慮して、不合理な待遇差は許されない。
- この原理は「パートタイム・有期雇用労働法」第8条などが根拠である。
- 判例(最高裁判決)の動き
「長澤運輸事件」を例に、定年後再雇用された社員が、定年前とほぼ同じ仕事をしているのに賃金が大幅に下げられたことについて争われた。最高裁は、- 再雇用後の賃金が下がること自体はただちに違法とはしない。定年後再雇用制度は、高齢者雇用安定法の趣旨に基づき、雇用機会を確保する制度であり、定年前とまったく同じ処遇を保証するものではない。
- ただし待遇差が「合理的かどうか」は検討されるべきであり、具体的には手当(精勤手当、住宅手当など)の格差が不合理と判断された部分があった。
- 結論・助言
- 再雇用後に給料が下がることは一般的であり、それ自体は法律違反ではない。
- ただし、待遇に差がある場合は、その差が仕事内容・責任・制度などを通じて「合理的」に説明可能であるかが重要。無理解・不合理な待遇差は法律上許されない。
- 不安がある場合、労働基準監督署や労働局に相談すること。
誤り・誤りの可能性・注意すべき箇所
この記事はおおむね正確であり、公的な調査データや判例を根拠にして制度を説明しているので、基本的な内容で大きな誤りは見当たりません。ただし、以下の点は注意・確認の余地があります。
- 「同一労働同一賃金」の適用範囲の誤解の可能性
記事中で「定年前と同じ仕事内容や責任を負っている場合には、不合理な待遇差を設けてはならない」とありますが、「仕事内容が全く同じかどうか」「責任の範囲」「将来的な配置転換の有無」などを判断するのは容易でないケースが多いです。実際には、再雇用契約の内容で業務範囲や責任・期待役割が変わることがあり、それが賃金低下の理由とされることがあります。 - 判例の一般化の限界
長澤運輸事件の最高裁判決が示す内容が非常に参考になるのは確かですが、すべての再雇用契約にその判例が直に適用できるわけではありません。たとえば、業種や職種、再雇用契約の具体的な条件(勤務時間・業務内容・手当・福利厚生など)が判例と違うなら、判断が異なる可能性があります。 - データの解釈の誤りの可能性
調査で「50~75%未満」の給与になるケースが多いということは、給与がかなり下がるケースが多数であることを示しているが、この数字では「なぜ下がるのか(勤務時間が減る、主任など役職が外れる、責任範囲が小さくなるなど)」までは明らかにされていません。つまり「同じ仕事」「仕事量・責任も同じ」かどうかを前提にしていない可能性がある点を読み手は気を付ける必要があります。 - 法律制度の最新状況
記事で紹介されている法律(パートタイム・有期雇用労働法/高齢者雇用安定法など)や判例は信頼性があるが、制度・ガイドラインの改正や追加判例が出ている可能性があります。記事執筆日が「2025年9月」であることを考えると、それ以降の改正や新判例をチェックする必要があります。
読者がこの記事を読むことで得られること
この記事を読むことで、以下の点を学び・理解できます。
- 再雇用後の給与がどれくらい下がることが一般的か
実際の調査データにより、定年前と比べて50~75%未満になるケースが最も多い、という数字感が得られる。 - 法律上の「同一労働同一賃金」の原則と、どこまでが義務・どこが裁量か
正社員と再雇用された嘱託などの契約形態の違いに関わらず、仕事内容・責任など実質に応じて待遇を決めなければならない、という考え方があること。 - 判例(長澤運輸事件)の具体例による判断の枠組み
どのような場合に待遇差が不合理とされるか(手当の扱い、待遇全体の一貫性など)を具体的に知ることができる。 - 自分や家族が再雇用された場合に“違法”かどうかを判断するヒント
「仕事内容・責任範囲」「手当などの待遇差」「契約内容の説明があるかどうか」など、自分の状況を照らしてチェックすべきポイントが分かる。 - 相談先・対処法
「法律では必ずしも定年前と同じ給与が保証されるわけではない」こと、「不合理と思われる待遇差については労働基準監督署や労働局に相談できる」などの実用的な情報。