マイナ保険証を登録解除して紙の保険証に戻す人が増えています。利便性が高いとされる一方で、使いにくさや不安を感じる声もあります。特に気になるのは「紙の保険証に戻すと医療費が高くなるのか」という点です。本記事では、制度の仕組みを整理し、負担にどのような違いが出るのかをわかりやすく解説します。
マイナ保険証とは何か
マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる仕組みです。医療機関や薬局でオンライン資格確認ができ、保険証の更新が不要になります。薬剤情報や健診結果を共有できる点も特徴です。
これにより、複数の病院で薬を処方されても、重複投薬や薬の飲み合わせリスクを軽減できます。患者自身の健康管理に役立ち、医師や薬剤師の判断材料が増えるのは大きなメリットといえます。
一方で、システム障害が起きた場合に使えなくなることや、カードの持ち歩きに不安を感じる人がいるのも事実です。
紙の保険証に戻すと医療費は高くなるのか
結論から言えば、自己負担割合は変わりません。
3割負担や2割負担といった基本の仕組みは同じであり、大幅に医療費が高くなることはありません。
ただし、診療報酬制度により、マイナ保険証を使った場合と紙の保険証を使った場合では、窓口での支払額に違いが出ることがあります。
医療費の加算に関する違い
厚生労働省は「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を導入しています。これは、マイナ保険証の利用を促すために設定された仕組みで、紙の保険証を提示した場合は加算額が大きくなる設計です。
以下の表で違いを確認しましょう。
マイナ保険証と紙の保険証の窓口負担の違い(初診時)
利用方法 | 加算額 | 患者負担(3割) |
---|---|---|
紙の保険証 | 6点(60円) | 約20円増 |
マイナ保険証 | 2点(20円) | 約10円増 |
マイナ保険証+情報提供同意あり | 0点 | 増額なし |
紙の保険証だと数十円の差が出るのが特徴です。金額としては小さいですが、制度上の優遇はマイナ保険証にあります。
マイナ保険証のメリットとデメリット
マイナ保険証のメリット・デメリット比較
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
更新 | 保険証の更新不要 | マイナカード更新が必要 |
情報共有 | 薬剤・健診データを医師と共有可能 | 情報利用に抵抗を持つ人もいる |
経済性 | 加算が軽減され窓口負担が減る | システム障害時に利用できない |
利便性 | 1枚で身分証明と保険証が兼用 | 持ち歩きリスクがある |
紙の保険証を選ぶ理由
マイナ保険証に切り替えても、紙の保険証を希望する人は少なくありません。理由を整理すると以下のようになります。
紙の保険証を選ぶ主な理由
理由 | 内容 |
---|---|
安心感 | 長年使っており馴染みがある |
情報管理 | 個人情報流出への不安を避けたい |
操作性 | 高齢者にとって使いやすい |
携帯性 | マイナンバーカードを持ち歩く必要がない |
特に高齢者は、従来の方法の方が安心と感じるケースが多いのが現状です。
医療機関での対応の違い
受付の流れも両者で違いがあります。
医療機関での受付対応の違い
項目 | マイナ保険証 | 紙の保険証 |
---|---|---|
資格確認 | オンライン認証(数秒) | 目視確認とシステム入力 |
情報共有 | 過去の薬歴や健診情報が確認可能 | 基本的に確認不可 |
所要時間 | 短い | やや長い |
この違いは患者の待ち時間や医療機関の事務効率に影響します。
将来の制度変更の可能性
政府は紙の保険証の廃止を進めています。今後はマイナ保険証が主流となり、紙の保険証は経過措置的な扱いになる見込みです。つまり、長期的にはマイナ保険証を使わざるを得ない状況になる可能性が高いといえます。
まとめ
マイナ保険証を解除して紙の保険証に戻しても、基本的な医療費の自己負担割合は変わりません。しかし、診療報酬の仕組みにより、窓口負担が数十円高くなる可能性があります。
マイナ保険証には利便性や情報共有といったメリットがある一方で、不安や抵抗感を持つ人も多いのが現状です。選択肢があるうちは、自分に合った方法を選ぶことが重要です。ただし、将来的にはマイナ保険証が主流になるため、早めに慣れておくことも一つの備えになります。