宇宙に旅立つときは、保険に入るのを忘れずに――。損害保険大手で、民間の人を対象とした「宇宙旅行」のリスクを補償する保険の提供・開発が始まっている。東京海上日動火災保険が提供する宇宙旅行者向けの保険は、宇宙への出発日から地上に帰還する日までの旅行者本人の死亡や後遺障害を補償する。これは、新しい旅行形態に対応した保険商品の一例であり、未来の旅行者にとって安心を提供するものである。
東京海上日動火災保険の取り組み
東京海上日動火災保険は、2023年4月に宇宙旅行者向けの保険提供を開始した。宇宙旅行には国際宇宙ステーションに滞在しながら地球を周回する「オービタル旅行」や、ジェット機などで数秒~数十秒間の無重力状態を体験できる「疑似宇宙旅行」など、さまざまな種類がある。同社は、こうした旅行形態のほか、到達する高度や滞在日数、搭乗機などに基づき、契約者ごとに補償範囲や保険料を決定する。この保険は、英ヴァージン・グループ傘下の宇宙旅行ビジネス会社「ヴァージンギャラクティック」が2023年に一般の客を乗せた初の商業宇宙飛行に成功したことを受けて開発された。同社と契約する日本人男性が宇宙旅行に向かう日が近付いてきたことも背景にある。
保険内容の詳細
東京海上日動が提供する保険は、宇宙旅行中の死亡や後遺障害を補償するもので、旅行者本人が安心して宇宙旅行を楽しむためのサポートを提供する。この保険は、旅行形態や到達する高度、滞在日数、搭乗機に応じて、個別に補償範囲や保険料が設定される。具体的には、オービタル旅行の場合、宇宙ステーションに滞在しながら地球を周回する期間中のリスクをカバーする。また、疑似宇宙旅行の場合、無重力体験中の事故や怪我に対する補償が含まれる。
さらに、東京海上日動は、宇宙旅行者向けに遠隔医療サービスを提供する商品の開発も検討している。これにより、宇宙滞在中に健康問題が発生した場合でも、地上の医師と連携して適切な医療支援を受けることができるようになる。
他の損保会社の動向
国内損保では、三井住友海上火災保険がANAホールディングスや旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)などと連携して宇宙旅行保険の開発を進めている。損害保険ジャパンは「将来的に提供できるように検討を進めている段階」としており、あいおいニッセイ同和損害保険も販売に向けて検討を進めている。これらの企業もまた、宇宙旅行のリスクに対する保険商品の開発に取り組んでおり、未来の旅行者にさらなる安心を提供することを目指している。
未来の保険商品の展望
東京海上日動は、今後さらに宇宙旅行保険の充実を図るため、宇宙ステーションに滞在する旅行者向けに遠隔医療サービスなどを付けた商品の開発も検討している。具体的には、保険契約の手続きが簡便で、宇宙滞在中に緊急事態が発生した場合の連絡方法や対応策が明確にされることが求められている。
また、宇宙旅行の需要が高まる中で、保険商品の内容も多様化することが期待されている。例えば、長期間の宇宙滞在を予定している旅行者向けの長期補償プランや、宇宙旅行中の荷物紛失や損害に対する補償を含む商品など、様々なニーズに対応するための保険商品が開発される可能性がある。
まとめ
宇宙旅行が現実のものとなる中で、それに伴うリスクを補償する保険商品の開発が進んでいる。東京海上日動火災保険をはじめとする大手損保各社は、宇宙旅行者向けの保険を提供・開発し、未来の旅行者に安心を提供するための取り組みを進めている。これにより、宇宙旅行がより安全で身近なものとなることが期待される。宇宙に旅立つ際には、保険に入ることが新たな常識となる日も近いだろう。宇宙旅行という新たな冒険が、私たちの日常に一歩ずつ近づいている今、保険の存在がその旅をより安心で充実したものにすることは間違いない。